研究実績の概要

 マダガスカルではアンタナナリボの商人に対する米価格情報を提供する介入実験の結果を分析し、論文として取りまとめた。携帯電話により価格情報を受けた商人は、複数の市場における価格を把握するようになったが、米の仕入れ先を変更することはなく、仕入れ先の選択には価格以外の要因が重要であることが明らかとなった。関連する研究として、マダガスカル全国の主要都市で小売りされている米の産地の分析から、米の物流に関する産地と市場の統合関係を把握した。米品質評価が標準化されていないことについて、産地と品種名の組合せが品質の代理指標となっていることを明らかにした。また、マダガスカルでは、輸出向けとして生産される有機認証SRI(System of Rice Intensification)米についても、生産と流通の観点から調査研究を実施した。輸出の実現には、農家組織化から販路開拓まで、外国の援助機関、NGO、民間企業といった外部からの強い支援があった。有機SRI米の生産は一部の意識の高く条件に恵まれた農家に限られており、生産振興のためには、①価格条件を改善して農家の生産意欲を高め、②技術研修などによって技術普及を図ることが必要であるとの結論を得た。SRIは有機米生産に限定されないが、同じ地域で実施したSRI技術研修に関する調査からは、研修参加はSRI技術採用を促し、米単収を約3t/ha上昇させることを明らかにした(ただし化学肥料も使用する)。
 ガーナでは、高品質な地元産米の販売実験に先立ち、クマシ周辺で精米業者や小売業者のベースライン調査を実施した。シエラレオネにおける調査はエボラ出血熱の流行のため中止した。ナイジェリアは2013年に実施した調査のデータの整備、分析を行った。
 カンボジアで精米業者の現地調査を行い、アフリカとの対比を行った。日本については引き続き文献整理を行った。


研究発表(雑誌・図書論文)

・横山繁樹・岡直子「マダガスカル稲作における小規模灌漑の現状と課題―中央高地南部のため池を中心に―」『農業普及研究』19(1): 84-92,2014年.
・横山繁樹・櫻井武司「稲作技術研修の参加要因と研修効果-マダガスカル中央高地におけるSRIの事例-」『農業経営研究』52(3): 83-88,2014年.


研究発表(学会発表)

・横山繁樹「マダガスカルにおける有機認証SRI米輸出の取り組み」日本農業経営学会,東京大学(東京都文京区)2014年9月20日.
・Yokoyama, S. and Sakurai, T. “Participation and Impact of Rice Cultivation Training: The Case of SRI in Madagascar,” 4th International Rice Congress, International Trade and Exhibition Centre, Bangkok, Thailand, October 30, 2014.
・横山繁樹「SRI農法のマダガスカル国内外における普及と展開」第19回マダガスカル研究懇談会,東京農業大学(東京都世田谷区)2015年3月28日.


研究発表(図書)

・Ralandison, T., Arimoto, Y., Kono, H., Sakurai, T., and Takahashi, K. 2015. Rice Flows across Regions in Madagascar. IDE Discussion Paper No.503, Institute of Developing Economies, JETRO: Mihama-ku, Chiba-shi, Japan.
・Sakurai, T., Ralandison, T., Takahashi, K., Arimoto, and Y., Kono, H. 2015. Is There Any Premium for Unobservable Quality? A Hedonic Price Analysis of Malagasy Rice Market. IDE Discussion Paper No.504, Institute of Developing Economies, JETRO: Mihama-ku, Chiba-shi, Japan.
・Arimoto, Y., Kono, H., Ralandison, T., Sakurai, T., and Takahashi, K. 2015. Understanding Traders’ Regional Arbitrage: The Case of Rice Traders in Antananarivo, Madagascar. Paper No.505, Institute of Developing Economies, JETRO: Mihama-ku, Chiba-shi, Japan.